次から次へと畳みかけてくる快感。 クリスティの短編集にある味わい。

 ミステリーを読むなら長編!とはいってもアガサの短編がキライってことじゃないんですよ。
”茶の葉”という作品なんかとてもおもしろかったです。あのトリックにはびっくりしました。記憶にしっかり焼きついてしまってます。

 もうひとつ、例によってタイトルをちゃんと思いだせないんですが。”銀の雨”だったように思います。あれも現実にはありえないだろうけど、きれいだなって思いました。

 だけどやはり、こういう単発的な作品よりも、ポワロやミス・マープルがでてくるシリーズ化されたもののほうが好きです。

 マープルものなら”火曜ナイトクラブ”
同じメンバーが火曜の夜ごとに集まって、自分だけが結末を知っている事件を披露してゆき、犯人を当てさせるという趣好が断然ふるってる。もちろん、正しく言い当てるのは毎回ミス・マープルだけなのですが、そうそうたる参加者たちを尻目に次から次へと当ててゆくマープルさんの小気味よさ!

 この次から次というのが大事。パンパンパン!と畳みかけてくる快感!分かちゃいるけどハマっちゃう!モウ短編集だからこその味わいですよね。

 読んだ時、肘かけイスに埋まってしまいそうなほど小柄で華奢な、シワだらけの貧相な顔に丸いメガネをかけたおバアちゃんを連想しました。

 このジミで目立たない老婦人というのがワザとらしいなあと思いつつも、効いてるんですよね。ズバリ真相を言い当てても態度が変わることなく、穏やかに微笑むだけ。ドヤ顔なんてしません。一度でいいから白鳥さんみたいに”ホー、ホッホッホッホ”とか、高笑いを響かせるとこ見てみたい気がするんだけど。

 テレビドラマ化された時にアガサが絶賛したというジョーン・ヒクソン版のマープルは、言わせてもらえば上品すぎ。カクシャクとしすぎてる。もっとちっさくて、背筋だけはピンとしてるけど目立たないおバアちゃんがいい。

 テレビドラマではほかにも二人の俳優がマープルをやっていてそれぞれに魅力的ですけど、映画化されたアンジェラ・ランズベリーのミス・マープルはわるいけどいただけない。なんといっても彼女はデカすぎでしょ!

 小柄っていうのが譲れないポイントなんだから、あれじゃもうマープルじゃない。ジェシカの横すべりじゃないか!

 そりゃあランズベリーさん、魅力はありますよ。けど、マープルではない。あくまでジェシカ。

 今を去ることン十年前の昭和の御世に”ペイトンプレイス物語”なるドラマがありまして、地方のとある町が舞台の群像劇でして、当時としてはドロドロのドラマでそれにランズベリーさん出てたんです。これ、アーカイブで調べたんですからね、念のため―
そこでなんと女子高生役のミア・ファーローの母親役でした。けっこうモテる役でびっくりしたもんです。子供心にはタレ目で、そんな美人とは思えなかったもんですから…。

 それが何十年もたって、いきなりジェシカですよ。見覚えのある顔だなって思ってたんですよね。アーカイブですけど。ワタシは何を言ってるんでしょう?マア、いい。要するに今のほうがイイってことなんです。若い時より歳をとってからのほうが魅力が出る人ってけっこういるんですね。

話がだいぶヘンな方向にズレてしまいましたが、ペイトンプレイス物語で、一番ヘンだったのは、続きもののドラマって普通は毎週一回なのに、何故か火曜と木曜の週二回やってたことなんです。ヘンでしょ?

 ヘンといえば、今さらだけど平成の前が昭和だったのに、また令和とかちょっと…。。ヘンじゃない?