
「暑くなりますから、水分は充分すぎるくらいお持ちくださいね」
「坂道ですから無理せずに。熊野古道は逃げませんから少しずつどうぞ」
行ってきましたよ、熊野古道と熊野本宮大社へ。
歩いたその距離合計10キロです。
今回の目的は、猫山の長編ミステリ「ドミノへ」のさらなる発展を願って、です。
今回私たちが歩いた距離は多く見積もっても20分の1以下ですが、とても充実したハイキングでした。
何が一番って、熊野古道や近隣の観光に携わる方々のプロ意識とちょっとした一言がうれしかったんです。
怪我しないように、汗をかいて楽しんで無事に旅が終えられるように、という気持ちがひしひしと伝わると言いますか……
きっと往時の旅人も、地元の方々の温かい言葉を背に歩いたんでしょうね。
中辺路の出発点とクライマックスを歩いた10キロ、そして舟下り
熊野詣でのためのいくつかある道のうち、今回は初心者でも歩きやすいという「中辺路(なかへち)」を選びましたよ。
熊野三山の神域のはじまりと言われる「滝尻王子」の山道500メートル往復を1日目に、そして同じく中辺路のクライマックスである、「発心門王子」から熊野本宮大社までの約7キロです。
合わせて、発心門王子から船玉神社までの往復約2キロちょっとを歩きました。
ちなみに中辺路を最初から最後まで歩き通すと約40キロ、熊野古道そのものの総距離は600キロとも1000キロとも言われており、そのうちの200キロ程度が世界遺産として登録されているとのことです。
そして、ハイキングの翌日には熊野速玉大社まで1時間半の「熊野川舟下り」
熊野詣でを陸と川から、歩いて下って堪能しよう、という計画です。
気分は往時の巡礼者?!ゆっくり歩いて見える景色
ざっくりと、なんですが標準的なタイムの2倍をかけて歩いた今回のハイキング。
平日ということもあり熊野古道歩きをしている方は少なめでしたが、それでも数組の方に抜かれるほどのゆっくりとしたペースです。
しかしそれがよかった。
日陰で足を止めては、「当時の人たちも日陰を見つけては涼しいですね、なんて話してたのかなか」とか
トカゲを見つけては「こっちのトカゲは虹色で、こっちのトカゲは綺麗な青で」など、先生との会話も弾みます。
調べたところ「ニホントカゲ」の子供が、虹色をまとうようです。実は私丼丼は初めてみたんですよ、こんな綺麗なトカゲ。
グリーンからオレンジや、ブルーからグリーンなど虹色の具合も様々で、そしてメタリックな色合いが涼しげでとても印象に
残るかわいいトカゲです。
ゆっくりといえば、舟下り。これも素晴らしかった。雄大な熊野川を木製の小さな舟で1時間かけて下るのですが、途中エンジンを止めてくれるんです。
エンジンを止めて、船頭さんの手漕ぎで、耳に入るのはわずかな川の流れと風の音だけ。
さらに、ガイドさんが笛を吹いてくれたのです。これがまた輪をかけて素晴らしいこと。もう一瞬にしてタイムスリップですよ。
プロの仕事が支える熊野古道ハイキング
今回の熊野古道ハイキングは、ガイドブックの他、和歌山県公式観光サイトを参考に
組み立てました。こちらの出来が微に入り細に入りとても良く実用的で参考になりましたよ。
山道歩きが柱となる観光ルートが多いことから、表面的な案内だけでなく標高や標準のコースタイムが盛り込まれ、特に観光向けの発心門王子から本宮大社までのルートは水場やトイレの整備と案内も
充実しています。
そして偶然なのか、ホテルの方も実際に歩いた経験がある方が多い印象でした。
今回私たちが歩いた熊野古道の一部は観光地化されているルートとはいえ、やはり山道であることに違いはないわけです。
浮かれ気分(?)の私たちにこうしたギャップを感じさせてくれ、そして注意を促すさりげない一言が、とても参考になりました。
舟下りの船頭さんとガイドさん。こちらもプロ意識に満ちていました。
決してそういうそぶりは見せないのですが、ライフジャケットがきちんと着用できているかどうか声をかけてくださることにはじまり、
川の様子も事前に確認し、状況によっては中止の判断も船頭さんがしているとのこと。そして実際に中止とした事例もあるそうです。
川のことを熟知する船頭さんに形だけでなく、そうした権限があるのが素晴らしいと思いませんか?
安全であるからこそ、私たちは安心して自然を楽しめるわけですからね。
「帰るまでが遠足です」とはよく耳にする言葉ですが、まさにその通り。
行きの計画立てから帰りまで、地域が一体となって盛り立てているんだな、熊野古道のことを大切にしているんだな、ということを
肌で感じた旅となりました。