ミステリーとオカルト異質なはずなのに‥ アガサの書く摩訶不思議系短編

自分でも意外なのですが、アガサの短編集の中でイチ推しは”謎のクィン氏”なのです。

オカルトってあんまり好きじゃないし、ミステリーとは相容れないジャンルのものだと思ってました。ミステリーはどんな摩訶不思議なことでも、解決時にはキチンとした説明がなされなきゃいけない。
これ、鉄パンでしょ?ところが、オカルトってそこらへんがアイマイ。理詰めでは成り立たない。説明できないのがウリ。だってチョージョーゲンショーなんだから!

アガサの短編の中にも、なんとなくそんなのがあったようななかったような……。
だらか、モロ摩訶不思議な主人公ってのを前面に打ち出した作品なんぞ、いくらアガサの作品とはいえとても読む気にはならなかったのです。
でもいくら多作なアガサ作品でも、やがて読むものがなくなってくる。

でまあ、仕方ない読んでみるか、みたいなカンジで手にとったワケです。

するとどうでしょ? メチャクチャおもしろいじゃありませんか。もっと早く読んどきゃ良かったぁ、とまたもや心の地団駄踏んじゃいました。

先ず、主人公コンビであるクィン氏とサタスウェイト氏のキャラ設定がいい。

クィン氏はどう見たってアヤカシ。当然、どことなくミステリーとしては違和感を拭いきれない。にもかかわらず、いつしか”クィン氏はそういうモン”的に受け入れてしまう。
これはもうひとえに、相棒サタスウェイト氏のおかげなんでしょうね。クィン氏には具体的なことはほぼ何もさせずに、サタスウェイトのオッサン一人を動きまわらせる。

このオッサンのキャラを創るにあたっては、アガサかなり腕をふるってると思いませんか?

ポワロのキャラ設定より凝ってんじゃないかと思うんですけど……。

正直、アガサの全作品中、ここまで趣向を凝らしたキャラは他にいないんじゃないでしょうか?

アリアドニ・オリヴァ夫人も、アガサ自身の分身としてかなり肩入れしてはいますけれども、それでもここまでコマゴマと念を入れてはいないと思うんですよね。
果ては長編にまで登場させているし……。

どうもアヤシイ……

ヨシ、今度アガサに会ったら訊いてみるとしましょう。なんて言うか?次の機会にご報告します。