タマリンドのジュース?馴染みの薄いドリンクに深い意味がきっとあるはず
オレンジでもアップルでも、いちごでもメロンでもレモンでもなくてタマリンド。
どうしてタマリンドのジュースが作中に登場したのだろう。
さてタマリンド。
これは、アジアあたりを海外旅行されたことがある人なら知っているだろう、アフリカの亜熱帯地域が原産のフルーツです。
写真ACより。
見た目は「大きなそら豆」といった印象で、それもそのはず「マメ科の植物」
日本のスーパーではほぼ流通しておらず、日本人には馴染みのないものですよね。
校長先生の愛犬であるシーザーの散歩から帰ったセバスチャンが喉を潤すために、お手伝いの望月さんが用意していたのが「酸っぱいタマリンドのジュース」なんです。
「タ、タマリンド?!日本ではあまりに馴染みがないフルーツが登場するとは、きっとこれは物語の伏線に違いない…!」
「物語の前半の校長先生宅での食事会で振る舞われたドリンクはブルーベリージュースだったのに、ここではなぜタマリンドのジュースなのだ」
「タマリンドジュースに仕込まれた毒薬で殺人事件が起きて、用意したお手伝いさんの望月さんが犯人と疑われ、実は真犯人が別にいるパターンだな」
「それじゃあ普通すぎる」
「別人が真犯人と思わせておいて実は望月さんがやっぱり犯人で、しかも別人に罪をなすりつけようとする極悪人だったというオチか」
「毒薬の苦味や匂いを隠すためにタマリンド味でそれらをカバーしようとした望月さん怖い」
「望月さん、優しそうな雰囲気して…何がそんなに彼女を追い詰めたのだろうか」
私の中では、望月さんが「ドミノ」で「何人もの学院関係者を殺す凶悪な殺人犯」に違いない、そうアタリを付けて読み進めました。
…
はい、ご想像どおり全然違いました。大間違いもいいところ。
望月さん、疑ってごめんなさい。
そりゃそうですよね。こんな簡単なトリックを先生が仕込むはずがありません。
ちなみにお手伝いさんの望月さんは最後までいい人のままでした。よかった。
駆けつけ三杯、タマリンドのジュース
まぁこのように、思わせぶりな小道具を登場させるところがミステリ好きをくすぐる、なんともニクい長編ミステリ「ドミノへ」です。
そして当然気になるわけですよ。セバスチャンが喉を潤すためにゴクゴクと三杯も飲んだというタマリンドのジュースとは、一体どんな味がするのだろう。酸っぱい飲み物らしいが、レモンジュースとは違うのか。
「駆けつけ三杯」とは言いますが、私にとってのそれはビールやお酒の話。
望月さんは校長先生一家のお屋敷に長くいるお手伝いさんとはいえ、普通の日本人のはずなのにタマリンドというチョイス。
「きっと裕福な家庭だから、珍しい食材がごく普通にある環境なんだろうな」
「ひょっとして望月さんは海外旅行が好きでバックパッカー時代にタマリンドジュースと出会ったのかも」
などとあれこれ勝手に想像しながら、タマリンドのジュースを飲みに行ってきましたよ。
実際に飲んでみて、セバスチャンがごくごく飲んだ理由もよく分かりました。
そこには望月さんの愛情がたっぷり込められていたんですよ。
やっぱり優しいや、望月さん。疑ってすみません。
アジアンタウンにきっとあるはず。新大久保へ
さて、やってきたのは「新大久保」です。
新大久保駅前の信号を渡ります。
韓国系のショップが多くあることで知られる新大久保ですが、今は韓国に限らずアジア各地の人々が集う、都内屈指のワールドワイドタウンです。
先述の通りタマリンドは亜熱帯のフルーツで、アジアやインドではおなじみの酸味が特徴のフルーツ。
さすが新大久保ですね。タマリンドのジュースもこちらにありました!
「タマリンド ジュース 都内」と検索して見つけたお店は、
「ベトナム料理 ベトナムフォー」さんです。
マツキヨの角を曲がってすぐ
二階にあがります。
「フォー」と名付けられた店名を見ただけでよだれが出ますね!
何を隠そう私、丼丼は「丼」繋がりなだけに「フォー」が好きなのです。
特にあっさりスープが大好き!もっちり米粉の麺であるフォーが合わさってツルツルといくらでも食べられます。スープだけおかわりしたいくらい〜。
フォーの文字に目を引かれ、タマリンドジュースそっちのけで「海鮮のフォー」をいただいちゃいました。
存在感のあるエビ
うーん、美味しい!
五臓六腑に染み渡ると言っても大げさでない、このスープ。
先生は「鶏肉のフォー」をチョイス。
生春巻きもサラダ感覚で、いくらでも食べられます。
フォーもそうなんですが、あっさりして塩味はキツくないのに、食べごたえを感じるんですよね。
そこがベトナム料理の好きなところです。

「ベトナムフォー」さんの店内は、「ホイアンランタン」が飾られ異国情緒に溢れます。
ベトナム食材が所狭しと並ぶ買い物スペースも併設され、されにはステージにミラーボール、そしてカラオケセットまで!
絶対盛り上がるやつですね
この日は平日のお昼どきでもあり、店内は故郷の味に集うベトナムやアジアの方々で賑わっていました。
食事を終えた若者二人が、何やら語り合っています。
その姿を見ていると、きっと夜には故郷の歌をうたいながら、ふるさとの思い出話なんか肴にお酒を飲んで楽しむんだろうな〜と思いました。
想像するだけでほっこりしますね。
フォーでお腹と異国旅行気分が満たされました。
ベトナムを味わいたい、という方はぜひ足を運んでみてください。
「新大久保駅徒歩2分のベトナムフォーさん」でした!
…
いやいやいやいや(笑)
肝心なものを忘れて帰るところでした。
本当の目的は(フォーも美味しかったけど)「タマリンドのジュース」です。
フォーをいただいたら満たされてしまって(笑)
さわやか酸味系ドリンクで疲労回復
急いで追加注文しましたよ。
グラスのロゴは気にしないで
先生は「グヮバジュース」をチョイス。こちらも南国ではおなじみのフルーツですよね。
どちらも300円とお手頃価格です。
タマリンドのジュースは見た目は白濁しており、乳酸菌ドリンクのようにも見えます。
ヤク○トっぽいです。
さてお味はいかに。
おぉ〜作中にもある通り、たしかに酸っぱい系ドリンクなんですね、タマリンドのジュース。
レモンのような酸っぱさというよりは甘みもしっかりあり、ちょうどいい酸味です。
サラサラ、というよりは後をひくねっとり系寄りで、さやわかな飲みごたえがあります。
氷の水分と相まって、ごくごくいけちゃいますよ。
白濁系の見た目ということもあり、ヨーグルト系酸味ドリンクを思わせるドリンクでした。
タマリンドのジュースをチョイスした私流謎解きがこちら
なるほど、そういうことか。
望月さんがタマリンドのジュースを用意した理由は、きっとこうです。
校長先生の愛犬シーザーの散歩から帰ったセバスチャンは、駆けつけ三杯も飲むほどに喉が乾いていたんです。
学院の敷地は、校長先生宅をはじめ教職員の住宅や学生寮があるリトル・ヴィレッヂを擁するほどに広いですから、散歩と言ったって結構疲れるはず。
望月さんは、疲れた体にピッタリのドリンクを用意していた、というわけなんですよ。
酸っぱさのもとのクエン酸は疲労回復効果で知られます。
さらにミネラル分もタマリンドには多く含まれ、それらも疲労回復効果には欠かせないといいます。
糖分とミネラルを組み合わせたドリンク、と聞いて思い浮かぶものはありませんか?
そう。スポーツドリンクです。
これは私の解釈ですが、何も含まれていない素の水に比べて、乾いた体に染み渡る、ってもんです。
望月さんは疲れて帰ってきたセバスチャンを思って、疲労回復効果があるタマリンドのジュースを用意したのかもしれません。
優しさがグラスから溢れています。
そして先生はそこまで望月さんというキャラクターを作り上げて、酸っぱいタマリンドのジュースを作中に仕込んだのか…!
すごい…!登場人物を作り上げる緻密さ。
そんな思いやりあふれる人を早合点し「犯人はお前か〜望月め!」と悪人に仕立てた私は、まだまだ修行が足りませんね。